6月から、睡眠障害を扱う科が、『睡眠障害科』として新しい診療科となりました。
それほど、多くの人が困っていて、どこに受診すればいいか悩んでいるということだと思います。
睡眠障害とは、眠ることや睡眠の質・リズムに問題が生じ、日中の生活や健康に影響を及ぼす状態を指します。
一時的なものもありますが、数週間から数か月以上続く場合は評価や治療が必要になります。
ちなみに、厚生労働省によると、1日の睡眠時間は、6時間〜8時間が適正と言われています。
睡眠時間が6時間未満という人は、男性で36.2%、女性で38.9%に上っています。
代表的な睡眠障害には次のようなものがあります。
・不眠症:寝つけない(入眠障害)、途中で何度も目が覚める(中途覚醒)、朝予定より早く目覚めてしまう(早朝覚醒)、十分眠った感じ(熟眠感)がしないなど。
・ 睡眠時無呼吸症候群:睡眠中に呼吸が何度も止まる病気で、いびきをほかの人に指摘されたり、日中の強い眠気が特徴です。
・ナルコレプシー:日中に強い眠気が起こり、突然眠ってしまうことがあります。
・むずむず脚症候群:脚に不快感があり、動かしたくなるため寝つきにくくなります。
などがあります。
これらの中で、睡眠時無呼吸症候群やナルコレプシー、むずむず脚症候群と診断された場合は、個別の治療を行います。
多くの人がイメージしやすい、睡眠障害は、不眠症ということになりますが、不眠症を診断するには、これらの疾患を除外して初めて、診断されます。
睡眠障害が日常生活に与える影響ですが、具体的には、仕事や学業のパフォーマンスの低下、集中力や記憶力の低下、やる気が出ない、情緒の不安定さ(気分がすぐれない・イライラしやすいなど)がみられます。
このように睡眠障害・睡眠不足は、日中の生活に大いに影響を与えますが、更に怖いのは様々な病気を引き起こすことです。
特に
・肥満
・メタボリックシンドローム
・うつ病
・循環器系疾患(高血圧・心筋梗塞・狭心症・脳卒中)
などの発症リスクにつながります。
睡眠時間が7〜8時間の人と比べると、1日6時間未満の人の発症リスクは4倍以上となります。
不眠症の原因はさまざまで、複数が重なることもあります。
* ストレスや不安
* 不規則な生活や夜更かし
* カフェインやアルコール、喫煙
* 一部の薬の影響
* 身体の病気や慢性的な痛み
* うつ病や不安症などの精神的な疾患
改善のためにできること
睡眠の質を高めるためには、いわゆる「睡眠衛生」を意識することが役立ちます。
* 毎日できるだけ同じ時間に寝起きする。
* 朝は日光を浴びる。
* 寝る2~3時間前までに夕食を済ませる。
* 寝る数時間前はカフェインやアルコールを控える。
* 寝る前はスマートフォンやパソコンの使用を減らす。
* 寝室を暗く静かで快適な温度に保つ。
* 適度な運動を日中に行う。
以下のことにも、気をつけて下さい。
『眠くなってからベッドに行く』
『ベッドでは寝る以外行わない』
『ベッドではスマホや読書をしない』
『寝られない時はベッドから一旦出る』
『昼寝は15時まで、20分まで』
『眠る直前にお風呂に入らない』
『カフェイン摂取は夕方まで』などが大事です。
医療機関を受診したほうがよい場合
次のような場合は、医療機関への相談をおすすめします。
* 眠れない状態が3か月以上続いている。
* 日中の眠気で仕事や学業、運転に支障がある。
* 大きないびきや睡眠中の無呼吸を指摘された。
* 睡眠中に異常な行動や頻繁な足の不快感がある。
* 睡眠の問題に加えて気分の落ち込みや強い不安が続いている。
睡眠障害は原因に応じて、生活習慣の改善、心理的なアプローチ(認知行動療法)、薬物療法などさまざまな治療法があります。
薬物療法では、安全性の高いオレキシン受容体拮抗薬やメラトニン受容体作動薬が優先されます。場合によってはベンゾジアゼピン受容体作動薬なども使われます。薬物は漫然と継続するのではなく、定期的に症状を評価し、可能であれば減薬・休薬も試みます。
特に、オレキシン受容体拮抗薬は、依存性が少ないとして注目されています。薬の種類も豊富です。
オレキシンとは
オレキシンは覚醒と睡眠を調節する神経伝達物質のひとつで脳内にある物質です。オレキシンが受容体(オレキシン受容体)へひっつくと覚醒システムを活性化させ覚醒が維持される。この覚醒システムが過剰に働いている状態では、不眠などの症状を引き起こしやすくなると考えられます。逆にこの覚醒システムの働きを抑えることができれば、脳を覚醒状態から睡眠状態へ促すことができます。
オレキシン受容体阻害薬は、オレキシンがオレキシン受容体へひっつくのを阻害(拮抗、つまり邪魔する)します。それにより、過剰に働いている覚醒システムを抑制し、脳を覚醒状態から睡眠状態へ移行させることで、睡眠障害(不眠症)を改善する効果が期待できます。
服用開始から比較的早期に睡眠改善が期待できるとされ、また、反跳性不眠(睡眠薬を急に減量したり中断した場合に以前より強い不眠が出現すること リバウンド)への懸念が少ないなどのメリットがあります。
現在、オレキシン受容体拮抗薬には、4種類あります。
ベルソムラ
デエビゴ
クービビック
ボルズィ
です。
内服後、効き始めるまでの時間や、効果持続時間もそれぞれの薬で違うため、当院では患者さんの不眠の詳細をお聞きし、適切な薬を選び、処方します。
また、睡眠衛生指導、睡眠時無呼吸症候群の診療も行っています。
日本睡眠学会の調査では、睡眠について課題を感じている人は58.4%と、約6割にのぼるようです。しかし、そのうち医師に実際に相談した人は、14.1%しかいなかったとのデータがあります。
当院では睡眠障害、不眠症の治療にも力を入れていますのでぜひご相談ください。

