当院では睡眠時無呼吸症候群の診療を積極的におこなっています。
以前の『寝苦しい夜におしっこの話』というブログを書きましたが、その中で睡眠時無呼吸について少し触れました。
今回はその睡眠時無呼吸についてのお話です。
Q1. 睡眠時無呼吸症候群はどんな病気ですか?
睡眠中に気道が塞がったり、呼吸中枢の指令が途絶えたりして、呼吸が止まる、または浅くなることを繰り返す病気です。10秒以上の気流停止を「無呼吸」と言います。睡眠中、1時間に5回以上の無呼吸がある場合を、睡眠時無呼吸症候群と診断します。
Q2. どんな種類がありますか?
閉塞性睡眠時無呼吸(OSA):上気道の物理的な閉塞が原因。全体の9割以上を占める最も多いタイプ
中枢性睡眠時無呼吸(CSA):脳の呼吸中枢からの指令自体が止まるタイプ。心不全(チェーン・ストークス呼吸)、脳血管障害、オピオイド使用などに関連
混合性:両方が組み合わさったタイプ
Q3. 診断、重症度はどう判定しますか?
1時間あたりの無呼吸・低呼吸の回数(AHI:無呼吸低呼吸指数)で判定します。
軽症:AHI 5〜15
中等症:AHI 15〜30
重症:AHI 30以上
原因・リスク因子
Q4. どんな人がなりやすいですか?
肥満(特に首・のど周りの脂肪沈着)
顎の形が小さい、後退している(小顎症など)
扁桃・アデノイドの肥大(子どもでは特に重要な原因)
加齢、男性、閉経後の女性
飲酒、睡眠薬・鎮静剤の使用
仰向けで寝ると悪化しやすい体質(体位依存性)
Q5. 太った人がなるイメージがありますが、やせている人でもなりますか?
やせていてもなる可能性があります。
顎の形態(小顎・後退顎)や扁桃肥大があると、体格に関係なく気道が狭くなりやすく発症します。日本人を含むアジア人は欧米人に比べ顎の骨格的な要因(顎が小さい)で発症しやすいとされています。
また、加齢によりのどや舌の筋肉が緩みやすくなり、気道をふさぎやすくなります。
睡眠薬を使ったり、飲酒して寝ることの多いかたもやせてても、この病気になります。
症状
Q6. どんな症状が出ますか?
大きないびき、呼吸が止まっているのを家族に指摘される
起床時の頭痛
夜中に何度も目が覚める、夜間頻尿
また、目が覚めなくても、深い睡眠が妨げられるためきちっと寝たはずなのに、睡眠は細切れになっています。
そのため
日中の強い眠気(会議中や運転中に眠くなるなど)
集中力の低下、イライラしやすくなる
などの症状があります。
Q7. 子どもの場合の症状は違いますか?
大人のような強い眠気ではなく、多動、学業不振、成長障害(体重・身長の伸びが悪い)といった形で現れることがあります。扁桃・アデノイド肥大が原因のことが多く、耳鼻科的な評価が重要です。
診断
Q8. どうやって診断しますか?
検査機器を一晩装着して睡眠中の呼吸状態を検査します。
検査には自宅でできる簡易検査と、原則として入院して行う精密検査があります。
簡易検査(在宅でできるタイプ):パルスオキシメーターと呼吸センサーを使い、自宅で一晩測定します。
ポリソムノグラフィー(PSG)(原則入院で行います):脳波・眼電図・筋電図なども同時に記録する精密検査で、診断の確定に用いられる標準的な方法です。睡眠の質や不整脈、他の睡眠障害の原因も調べます。入院で行います。
Q9. 検査を受けたほうがいいのはどんな人ですか?
Q6 の症状が当てはまる方。大きないびき、家族に呼吸が止まっていると指摘された、日中の強い眠気、居眠りで困る、治療に反応しにくい高血圧、原因不明の夜間頻尿などがある人は、いくら寝ても朝疲れが取れない、朝頭痛がするなどが当てはまる場合は、検査を検討したほうがよいでしょう。一度当院にご相談ください。
治療
Q10. 治療の中心は何ですか?
中等症以上ではCPAP(持続陽圧呼吸療法)が第一選択です。鼻に装着したマスクから空気を送り、小さい気圧(風圧)をかけることで、気道が塞がらないよう物理的に支えます。装着した翌日から眠気やいびきが改善することもあります。
Q11. CPAP以外の治療法はありますか?
口腔内装置(マウスピース):軽症〜中等症向け。下顎を前方に移動させて気道を広げます
体重減量:肥満が原因の場合、減量によりAHIが改善することがあります
側臥位(横向き寝)の指導:仰向けで悪化するタイプに有効
外科的治療:扁桃摘出(子どもでは第一選択となることが多い)、口蓋垂軟口蓋咽頭形成術など。適応は限定的です
禁酒・睡眠薬の見直し
Q12. CPAPは一生続けなければいけませんか?
CPAPは気道の閉塞を物理的に防ぐ対症療法なので、使用をやめると症状は元に戻ります。体重減量など根本原因の改善が進めば、医師と相談のうえで治療の見直しができる場合もあります。
Q13. CPAPが合わない、続けられない場合はどうすればいいですか?
マスクのフィット感やモード設定の調整で改善することが多いです。それでも難しい場合はマウスピースや外科的治療など他の選択肢を主治医と相談してください。CPAPは継続率(アドヒアランス)が治療効果を左右する最大の要因です。
合併症・放置すると、どうなるか
Q14. 治療せずに放置するとどんなリスクがありますか?
高血圧(特に治療抵抗性の高血圧の原因になることがあります)
心房細動、心不全、虚血性心疾患など心臓のトラブル
脳卒中(脳出血やの脳梗塞)
2型糖尿病・インスリン抵抗性の悪化
日中の眠気による交通事故のリスク上昇
これは、特別な場合ですが、手術の際の気道確保困難、術後の呼吸抑制リスクなどもあります。
Q15. 高血圧の薬を飲んでもなかなか下がらないのですが、関係ありますか?
関係している可能性があります。SASは治療抵抗性高血圧の代表的な原因の一つとされており、CPAP治療によって血圧が改善する例が多く報告されています。
生活上の注意
Q16. 日常生活で気をつけることはありますか?
減量(肥満がある場合)
就寝前の飲酒を控える
睡眠薬・鎮静剤は医師に相談のうえ使用する
仰向けを避け、横向きで寝る工夫をする
十分な睡眠時間を確保する
Q17. 家族にできることはありますか?
いびきの音の変化や呼吸が止まっている様子に気づいたら、本人に伝えて受診を促すことが早期発見につながります。本人は自覚しにくい病気なので、家族の気づきが重要です。
睡眠時無呼吸なんて自分には関係ない?
いえいえ。
日本における睡眠時無呼吸症候群患者は約500万人とされていますが、そのうち適切に治療を受けているのはせいぜい1割程度と言われています。それだけ無治療で放置されています。
この病気は治療によって劇的に改善することが多く、周りの人にいびきや無呼吸を指摘されたら早めに当院を受診してください。

