6月1日の開業に向けて準備中です。
今回は、腰や下肢の痛みの原因となる病気について、症状の違いや治療法についてわかりやすく説明します。
腰椎椎間板ヘルニア
椎間板は背骨(椎体 ついたい といます)と背骨の間にあり、クッションの役割を果たしています。
背骨のレントゲンを真横から撮ると、背骨はレントゲンに写りますが、椎間板はレントゲンでは写らないので、背骨が飛び飛びに写ります。
レントゲンで写らない背骨と背骨の間に椎間板があります。
椎間板ヘルニアとは、この椎間板に背骨からの圧力がかかり、その中にある髄核(椎間板の芯のようなもの 椎間板の中身)が飛び出てしまうことをいいます。
ご家庭にあるクッションに無理な力が加わると、生地が裂けて中の詰め物が飛び出るイメージです。
飛び出た椎間板が、背骨の中の神経を圧迫し、神経の周りに炎症が起きることで、腰やお尻の痛み、お尻から足にかけての痛みやしびれなどが生じます。
原因としては、重い荷物を持ち上げるなどの動作や、スポーツによる酷使、加齢による椎間板の変性などが考えられています。後で説明します、腰部脊柱管狭窄症に比べて、比較的若い方が多いのが腰椎椎間板ヘルニアの特徴です。
また、前かがみになると椎間板の中身がとびだしやすくなるので、症状が悪化します。
また、馬尾(ばび)と呼ばれる神経の束が障害されると、膀胱直腸障害(排尿・排便の異常 尿が出にくい、お通じが出せない)、会陰部(えいんぶと読み、お尻の穴の辺りのこと)などの痛み、しびれや異常な感覚が出ることもあります。
ほとんどの場合、まずは手術をするのではなく、痛み止めなどで保存的に治療を行います。飛び出ているヘルニアは、少しずつ自然に吸収されていくことが多いと言われています。
そのため手術の適応となるのは約10%と言われています。
痛みがひどい場合は、ヘルニアが吸収されるまで、神経ブロックや薬物療法などを行います。
当院では薬物療法でも治らない痛みの場合、神経ブロック療法(硬膜外ブロックや神経根ブロック)を行います。
神経ブロックでは、圧迫され炎症が起こっている神経の近くに、炎症を抑える薬や局所麻酔薬を直接注射することができます。痛みを取り除き、血流を改善することで、原因となっている神経周囲の環境を整えることで自己治癒能を高め、効率的に治療が可能です。
薬物療法は消炎鎮痛剤のほか、神経痛を抑える薬などを使用します。この他にコルセットを装着する装具療法、牽引や電気治療などの物理療法も併せて行う事があります。
足の筋力低下や排尿・排便の異常がある場合は、手術が必要な場合がありますので、適切に紹介いたします。
腰部脊柱管狭窄症(ようぶせきちゅうかんきょうさくしょう)
脊柱管狭窄症は、主に加齢(かれい 年をとること)による背骨の変形や靭帯などの変化によって、背骨の中にある脊柱管が狭くなり、中を通る神経が圧迫されることで起こる病気です。
狭窄とは狭くなることを意味する医学用語です。
前述の腰椎椎間板ヘルニアが、スポーツや生活での腰への負担によって起こるのに対し、腰部脊柱管狭窄症は骨や靭帯などの長年の変化でゆっくり狭くなったことが原因です。
その分、腰部脊柱管狭窄症は、中高年の人に起こりやすい病気です。
腰部で狭窄が起きると、臀部から足にかけてのしびれや痛み、脱力感などが生じます。
安静にしていると何ともないですが、ある一定の距離を歩くと、足のしびれや痛みが強くなり、腰を曲げて休むと改善して再び歩けるようになる(間欠性跛行 かんけつせいはこう)という特徴があります。
前かがみになって歩くと神経の圧迫が和らぐので、杖をつく、シルバーカーを押すなどして歩くと楽に感じるようになります。
また、自転車なら距離に関係なく問題なく乗れるなどの特徴もあります。
腰椎椎間板ヘルニアでは前かがみで症状が悪くなるのと逆で、腰部脊柱管狭窄は症状がましになります。
治療については、原則的に保存療法になります。神経ブロック、薬物療法、漢方薬、物理療法、リハビリなどを組み合わせて症状の改善を図ります。
当院では、硬膜外麻酔や神経根ブロックを行うことが可能で、炎症を抑える薬と局所麻酔薬を、狭窄部分の神経の近くに注射します。
締め付けられ、血流が悪くなり炎症が起こっている神経に直接届くように注射します。
注射や鎮痛薬の内服を定期的に行い、リハビリや運動を継続する事で症状の改善を促します。
また冷える時期に症状が悪化することも多いため漢方薬を用いることで体を温めたりするのも有効です。症状が強い場合(数十メートルしか歩けない、痛みが強いなど)には椎弓切除や椎体固定術など脊柱管を広げる手術が必要になります。
急性腰痛、ぎっくり腰
腰痛は日本人の有訴者率で男性の1位、女性の2位となっており、約80%の人が一生の中で1度は経験するといわれています。
1か月未満は急性腰痛、3ヵ月以上続くものは慢性腰痛に分類されます。
ぎっくり腰などの急性腰痛は、椎間関節(ついかんかんせつ)、椎間板、脊柱起立筋、筋膜の炎症が原因と考えられています。
椎間関節とは、初めて聞く方も多いと思います。
一列に並んでいる背骨の中で、上の背骨と下の背骨が触れる部分で、関節を作っています。
脊柱起立筋は背骨の両側を支えている大きな筋肉で、人が立って歩く時に体を支える筋肉です。
椎間関節、椎間板、筋肉、筋膜は、レントゲンで写らないですので、ここに原因がある場合は、レントゲンを撮っても異常がありません。(骨に異常がないことを 確認するためにレントゲンを撮ることはとても重要です)
急性腰痛の原因がこれらの炎症である場合、痛み止めの薬を飲みながら自然に軽快することも多いのですが、人によっては、痛みの極期に寝込んで全く動けなくなるほど強烈な痛みとなります。
当院ではレントゲン検査や身体所見、問診表などから出来るだけ原因を解明したうえで治療を行います。
MRIやCTによる詳細な検査が必要と判断すれば、連携先の医療機関にて速やかに受けていただくことが可能です。
先ほど、レントゲンで写る・写らないのお話をしましたが、腰痛の原因となる腰椎椎間板ヘルニア、腰部脊柱管狭窄症、圧迫骨折、脊椎分離・すべり症などは画像で診断が可能です。
(レントゲンやCT、MRIを含めて画像検査で診断が出来ます)
一方、その他の腰痛の原因として多い、脊椎椎間関節症や筋肉・筋膜性の腰痛は、画像検査では確定できず、レントゲンやエコーガイドを使ってブロック注射を行う事で診断が可能になります。
その他、消炎鎮痛剤や筋弛緩剤などの薬物療法、物理療法などを組み合わせ、リハビリを行う事で腰痛の改善と予防をはかります。
坐骨神経痛
坐骨神経は、腰から足先まで伸びている末梢神経です。人の体で、一番太い末梢神経と言われています。この神経が脊柱管狭窄症や椎間板ヘルニア、脊椎の変形などによって、腰の部分で圧迫されることが原因です。
また、梨状筋症候群といって、お尻の筋肉のところで圧迫されて起こることもあります。
いずれにせよ、圧迫により炎症が起こります。
症状としてはお尻や太もも、足先にかけて痛みやしびれ、圧迫感などが生じます。
レントゲンや超音波装置を用い神経を同定してから神経ブロックを行ったり、しびれや痛みを抑える薬の内服、物理療法、運動療法などを行います。
変形性膝関節症
変形性膝関節症は、主に加齢や膝関節の酷使、肥満などが原因で、膝の関節軟骨が摩耗し、太ももの骨のすねの骨が、ぶつかりやすくなります。次第に関節内で炎症が起こることで痛みが生じます。
症状はまず、立ち上がる•歩き始めるときに痛みが出るようになり、進行すると膝に水がたまったり、階段の上り下りがしにくいといった症状が出てきます。
さらに変形が進むと安静にしていても痛みがあり、歩行が困難になります。 正座もしにくくなります。
このように膝に痛みを感じたら、速やかにレントゲンなどで変形の有無を確認する必要があります。
レントゲンで診断できます。
痛みが強い場合には消炎鎮痛剤の内服や外用、関節内にヒアルロン酸を注射します。
悪化を予防したり、症状を軽くするために重要なのは、下肢筋力の維持・向上と体重の減量です。
膝関節周囲の筋肉、特に大腿四頭筋の筋トレを含むリハビリや膝装具、足底板による装具療法で膝関節にかかる負担を軽減するようにします。
これらの保存療法でも改善しない場合は高位脛骨骨切り術や人工関節置換術が行われます。
筋痙攣(こむら返り)
筋痙攣とは筋肉がつってしまう状態のことで、これが下腿三頭筋(ふくらはぎ)で起こると、こむら返りと呼びます。
高齢者や女性、妊婦の方に多く、過度の運動をした後や、睡眠中に何の前触れもなく、ふくらはぎに激痛が起こります。
原因としては脊柱管狭窄症などの脊椎疾患、下肢静脈瘤、閉塞性動脈硬化症などの血管障害、脱水や糖尿病、甲状腺疾患などのほか、薬剤の副作用で起こることもあります。
痛みが夜間に起こると睡眠の妨げとなり、日常生活に支障を来しますので原因を特定し治療することが肝心です。
予防対策として水分をしっかりとって脱水を防ぐこと、ミネラルやビタミンを含む正しい食生活、適度なストレッチと運動などがあります。
原因疾患がある場合はその治療を行いますが、原因がはっきりしない場合は芍薬甘草湯という漢方薬が有効な場合があります。
ただ長期間内服すると偽牲アルドステロンという病気(低カリウム血症や高血圧)になることもあるので注意が必要です。
当院ではその他に足先に簡単な注射(局所麻酔薬)をすることで発症を予防したり、症状を緩和したりする治療を行っています。
妊婦の方は内服薬の制限がありますが、少量の局所麻酔薬で治療可能ですので一度ご相談ください。


