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笑顔の森ブログ

帯状疱疹後神経痛について

2026.09.20

帯状疱疹後神経痛について

 

天満にある、笑顔の森内科クリニックにも、帯状疱疹後神経痛に悩む方が、来られています。

 

今回は、この帯状疱疹後神経痛についてご説明させてもらいます。

 

帯状疱疹後神経痛は、「皮膚の病気が治ったのに、傷ついた神経が、長い時間、痛み続ける状態」です。

帯状疱疹そのものは、早く抗ウイルス薬を始めることが大切です。そして、帯状疱疹の痛みも我慢しすぎず、適切に治療することが重要です。

ただし、

「痛み止めをしっかり使えば、必ず帯状疱疹後神経痛を防げる」

というほど単純ではありません。

痛みを十分に治療することは患者さんの負担を減らすうえで重要ですが、鎮痛薬だけで帯状疱疹後神経痛を確実に予防できる、という訳ではありません。

帯状疱疹後神経痛には、年齢や皮疹の程度、神経そのものの障害の程度など、患者さん個々により様々な要因が複雑に絡み合っています。

 

 

 

1.そもそも帯状疱疹とは?

 

帯状疱疹の原因は、水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)です。

子どものころに「水ぼうそう」にかかったことがありますね。

水ぼうそうが治っても、ウイルスは体から完全になくなるわけではありません。

神経の根元にある「神経節」という場所に、長期間、眠った状態で潜んでいます。

そして何十年もたってから、何らかのきっかけでウイルスが再び活動を始めると、

 

神経の中をウイルスが移動する

神経に炎症が起こる

神経に沿って、皮膚に痛みや水ぶくれが出る

というのが帯状疱疹です。

典型的には、体の左右どちらか一方に、神経の走行に沿って帯状に発疹が出ます。

 

 

2.なぜ「帯状」になるの?

 

神経は、皮膚の一定の範囲を帯の様に担当しています。

そのため、ウイルスがある神経に沿って移動すると、その神経が担当している皮膚に沿って帯状に症状が出ます。

例えば、

* 胸や背中
* お腹
* 腰
* 顔
* 頭
* お尻や足

などに出ます。

そのため、「体の片側だけに、ピリピリ・チクチクした痛みが出て、その後に赤い発疹や水疱が出てきた」という場合には、帯状疱疹を疑います。

 

 

3.帯状疱疹は一生に何人くらいがかかる?

 

日本ではかなり身近な病気です。

大規模な日本の疫学調査では、80歳までにおよそ3人に1人が帯状疱疹を経験するとされています。近年、日本では帯状疱疹の発症率が上昇しています。

つまり、

「帯状疱疹は珍しい病気」

ではありません。

特に50歳を過ぎるころから増え、70歳代で発症が最も多いことが日本の厚生労働省の資料でも示されています。

 

 

4.なぜ高齢になると帯状疱疹が増えるの?

 

ここは患者さんから非常によく質問されます。

「年を取ると免疫が弱くなるから」と説明されることが多いのですが、もう少し正確にいうと、

年齢とともに、ウイルスを抑えている「細胞性免疫」が弱くなるから

と考えられています。

細胞性免疫は、リンパ球が担っています。

若いころは、この免疫がウイルスをしっかり監視しています。

ところが加齢とともに、

 

水痘・帯状疱疹ウイルスを抑えておく免疫力が少しずつ低下

潜んでいたウイルスが再活性化

帯状疱疹

ということが起こりやすくなります。

そのため、

「昔、水ぼうそうにかかったことがある人が、年齢を重ねてから帯状疱疹になる」

ということになります。

 

 

5.「疲れたから帯状疱疹になった」というのは本当?

 

疲労、睡眠不足、強いストレスなどが発症のきっかけとして語られることがあります。

ただし、

「疲れたことが直接の原因」

というより、

免疫によるウイルスの抑え込みが弱くなることが重要

と考えたほうが正確です。

また、別の病気で、免疫を抑える治療を受けている人、特定の病気がある人などでは発症リスクが高くなります。

 

 

6.帯状疱疹になると、なぜ神経痛が残るの?

 

これが帯状疱疹後神経痛(PHN)の本質です。

帯状疱疹では、単に皮膚にウイルスがついているだけではありません。

神経そのものに炎症や傷害が起こります。

 

イメージとしては、

電気コードの中を神経と考える

帯状疱疹によって神経が傷つく

皮膚の水ぶくれは治る

しかし神経そのものの傷が残る

神経が異常な電気信号を出す

「痛い」「焼ける」「ビリビリする」と感じる

という状態です。

そのため、皮膚がきれいになったのに痛いということが起こります。

 

 

7.帯状疱疹後神経痛はどんな痛み?

 

普通の「傷の痛み」と少し違います。

例えば、

* ピリピリする
* ビリビリする
* ジンジンする
* 焼けるように痛い
* 電気が走るように痛い
* ズキズキする
* 触るだけで痛い
* シャツが触れただけで痛い
* 布団が触れても痛い

などです。

特に特徴的なのが、

「本来なら痛くない刺激が痛く感じる」

ことです。

例えば、

「服や下着が触れただけなのに痛い」

という状態です。

これをアロディニア(異痛症)といいます。

 

 

8.誰が帯状疱疹後神経痛になりやすい?

 

一番重要なのは年齢です。

特に高齢になるほどリスクが高くなります。

そのほか、

リスクが高い人

* 高齢者
* 帯状疱疹の痛みが強かった人
* 発疹が広範囲・重症だった人
* 発疹が出る前から強い痛みがあった人
* 顔・目の周囲に帯状疱疹が出た人
* 免疫機能が低下している人
* 糖尿病などの慢性疾患がある人

などが知られています。

つまり、

「高齢者+強い痛み+重い皮疹」

は特に注意が必要です。

 

 

9.高齢者は、なぜ神経痛になりやすい?

 

これも非常に重要です。

高齢になると、

1. 帯状疱疹そのものが起こりやすくなる
2. 神経の修復能力が低下する
3. 神経が傷害された後に痛みが慢性化しやすくなる

などの要素が重なります。

したがって、

「高齢者は帯状疱疹になりやすい」

「高齢者は帯状疱疹後神経痛にもなりやすい」

という二重の意味があります。

 

 

10.帯状疱疹が出たら、最初に何をする?

 

ここが非常に大切です。

原則は「早く診断して、早く抗ウイルス薬」

帯状疱疹と診断されたら、基本的には抗ウイルス薬による治療を早期に開始することが重要です。

日本皮膚科学会の2025年ガイドラインでも、帯状疱疹では早期の抗ウイルス薬投与が基本とされています。

代表的な薬は、

* アシクロビル
* バラシクロビル
* ファムシクロビル

などです。

重症例や免疫不全の患者さんでは、点滴による抗ウイルス薬が検討されることもあります。

 

 

11.「痛くないから大丈夫」は危険

 

帯状疱疹は、最初に

「皮疹より先に痛みが出る」

ことがあります。

例えば、

「右胸が急にピリピリする」

「筋肉痛かな?」

数日後、右胸に水疱が出る

ということがあります。

反対に、皮疹が先に出る場合もあります。

ですから、

片側だけのピリピリした痛み+後から発疹

という場合は、早めに受診することが大切です。

 

 

12.抗ウイルス薬を早く飲めば、神経痛は防げる?

 

ここは患者さんに誤解されやすいところです。

抗ウイルス薬は重要ですが、

抗ウイルス薬を飲めば帯状疱疹後神経痛を完全に防げる

わけではありません。

抗ウイルス薬は、ウイルスの増殖を抑え、皮疹の経過や急性期の病気を改善するために重要です。

しかし、神経がすでに強く傷害されている場合には、その後に神経痛が残ることがあります。

したがって治療は、

①ウイルスを抑える

②急性期の痛みを治療する

③神経痛が残ったら早めに治療する

という三本柱で考えます。

 

 

13.では、「痛みをしっかり取る」と神経痛は残りにくくなる?

 

これは非常に重要な質問です。

結論

痛みを十分に治療することは大切です。

ただし、

「鎮痛をしっかりすればPHNを確実に予防できる」とまでは言えません。

急性期の強い痛みを放置するのは望ましくありません。

一方、神経ブロックなどを含めて積極的に痛みを抑える治療がPHNを確実に予防するというエビデンスは十分ではありません。日本皮膚科学会の2025年ガイドラインでも、急性期の疼痛治療は重要ですが、特定の治療でPHNを確実に予防できるとはされていません。

したがって患者さんには、

「痛み止めを使えば神経痛を必ず防げる、というわけではありません。でも、痛みを我慢したり、不十分な鎮痛は、よくありません。」

と説明しています。

 

 

14.帯状疱疹の治療では「皮膚」と「痛み」を別々に考える

 

帯状疱疹では、

A.ウイルスに対する治療

抗ウイルス薬

B.皮膚に対する治療

軟膏、皮膚の清潔保持など

C.痛みに対する治療

鎮痛薬など

を並行して行います。

特に高齢者では、

「皮疹はそれほどひどくないのに、ものすごく痛い」

ということもあります。

逆に、

「皮疹はかなりひどいのに、痛みはそれほどでもない」

こともあります。

したがって、皮膚の見た目だけで重症度を判断しないことが大切です。

 

 

15.帯状疱疹後神経痛になったら、どう治療する?

 

ここからは「慢性期」の治療です。

帯状疱疹後神経痛は、普通の炎症性の痛みとは違って、

「神経そのものが傷ついている痛み」=神経障害性疼痛

です。

そのため、一般的な痛み止め、例えばロキソニンが有名ですが、では十分効かないことがあります。

 

 

16.治療薬はどういう順番で使う?

 

日本では、神経障害性疼痛に対して複数の薬剤が使われます。日本ペインクリニック学会は2026年6月に「神経障害性疼痛薬物療法ガイドライン改訂第3版」を公表しています。

患者さん向けには、次のように説明すると分かりやすいです。

第1段階:神経の興奮を抑える薬

代表的なのが、

* プレガバリン
* ミロガバリン
* ガバペンチン

などです。

神経が「過剰に興奮して痛みを出している」状態を抑えます。

日本ではプレガバリンやミロガバリンが帯状疱疹後神経痛に広く使われています。

注意点

特に高齢者では、

* 眠気
* めまい
* ふらつき
* 転倒
* むくみ

などに注意します。

また、これらの薬は腎臓から排泄されるものが多いため、腎機能に応じた調整が重要です。

「高齢者だから一律に減量」ではなく、

腎機能、体格、併用薬、眠気・ふらつきの程度を見ながら少量から調整する

という考え方が重要です。

 

 

17.第2段階:抗うつ薬を利用する

 

「抗うつ薬」と聞くと、

「私はうつ病ではないのですが?」

と思われる患者さんがいます。

これは、うつ病を治療するためだけに使うわけではありません。

一部の抗うつ薬には、

痛みを伝える神経回路を調整する作用

があります。

代表的には、

* アミトリプチリン
* ノルトリプチリン
* デュロキセチン

などがあります。

ただし高齢者では、

* 口渇
* 便秘
* 排尿障害
* 眠気
* 立ちくらみ
* 不整脈など

への注意が必要な薬があります。

したがって、

若い人と高齢者では薬の選び方が違う

と考えてください。

 

 

18.第3段階:外用薬を使う

 

痛い場所が比較的限局している場合には、

* リドカイン外用薬
* その他の局所治療

などが検討されることがあります。

「飲み薬を増やすと眠くなってしまう」という高齢者では、局所治療を組み合わせるという考え方が有用な場合があります。

 

 

19.それでも痛みが強い場合

 

薬だけで十分にコントロールできない場合は、

ペインクリニック

への紹介を考えます。

場合によって、

* 神経ブロック
* パルス高周波療法
* 神経刺激療法
* その他のインターベンショナル治療

などが検討されます。

日本ペインクリニック学会の治療指針にも、帯状疱疹後神経痛に対する神経ブロックやパルス高周波療法などが掲載されています。

ただし、これは全員に行う治療ではなく、

薬物治療で十分な効果が得られない場合などに選ぶ治療

と考えるとよいでしょう。

 

 

20.「痛み止め」を飲んでも効かないのはなぜ?

 

ここも重要です。

例えば、

ロキソプロフェンなどのNSAIDsや、カロナールは、

痛み止めとして、よく知られています。

これは、炎症による痛みには有効です。

打撲や、切り傷、擦り傷、感染などです。

しかし帯状疱疹後神経痛は、炎症の痛みでは、ありません。

「皮膚に炎症が続いていて(皮膚に痛みの原因があって)、それを神経が伝えて、痛いと感じる」のではなく「神経そのものが、後遺症で傷ついている痛み」

なのです。

そのため、

ロキソニンを飲んでもあまり効かない

ということがあります。

だから、

「痛み止めが効かない=我慢するしかない」

ではありません。

痛みの種類を見直して、神経障害性疼痛に対する薬へ治療を切り替えることが重要です。

 

 

21.薬は「痛くなったときだけ」飲むの?

 

神経障害性疼痛の薬では、これは重要なポイントです。

一般的な鎮痛薬のように、

「痛くなったから1錠飲む」

という使い方だけではなく、

少量から開始

徐々に増量

効果と副作用を確認

痛みが十分下がったら、その量を維持

という使い方をする薬があります。

特にプレガバリン、ミロガバリンなどは、眠気・ふらつきなどを確認しながら段階的に調整することが重要です。

自己判断で急に増量したり、中止したりするのは避けます。

 

 

22.治療は「痛みゼロ」を目指すの?

 

必ずしもそうではありません。

帯状疱疹後神経痛では、

「完全に0にする」

ことだけを目標にするのではなく、

「痛みを十分に減らして、生活できるようにする」

ことが重要です。

例えば、

「10点満点で8の痛みだったものが3になった」

だけでも、

* 夜眠れる
* 着替えられる
* 外出できる
* 食事ができる
* 趣味ができる

ようになるなら、大きな治療効果です。

 

 

23.帯状疱疹後神経痛は一生続くの?

 

必ず一生続くわけではありません。

時間が経つにつれて神経が回復し、痛みが軽くなる患者さんもいます。

一方で、

数か月、場合によっては年単位で続く人もいます。

特に高齢者や重症例では長引く可能性があります。

したがって、

「皮疹が治ったから、もう治療は終わり」

ではありません。

皮膚が治った後も痛みが続くなら、「神経の痛み」に対する治療に切り替えることが大切です。

 

 

24.帯状疱疹後神経痛を予防する一番確実な方法は?

 

現在もっとも重要なのは、

「帯状疱疹そのものを予防する」

ことです。

つまりワクチンです。

日本では2025年度から、帯状疱疹ワクチンが定期接種の対象となりました。現在は、

* 生ワクチン
* 組換えワクチン

の2種類があります。

ワクチンについては、次回にお話します。

 

 

帯状疱疹後神経痛は、とても厄介な病気で多くの方が悩まれています。

急性期から慢性期まで、当院では診療を行っていますので、

ご相談ください。

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