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アナフィラキシーとは

2026.06.17

今回はアナフィラキシーについてのお話です。

 これから夏にかけて、アウトドアを楽しむ方も多いと思います。
山でスズメバチに刺されて、アナフィラキシーショックになった、といったニュースをたまに耳にします。

 このアナフィラキシーとは、一体何でしょうか。
そして、治療薬として注目されているエピペンとはどういうものでしょうか。


 アナフィラキシーとは、アレルギー反応の中でも、生命を脅かすほど重症の状態になるアレルギー反応です。
数分~数十分で重症化することがあり、迅速な対応が必要なアレルギー反応です。

 アレルギーを起こす原因をアレルゲンと言います。
多いのが薬、食べ物、ハチの毒です。
薬を飲んだり、食べ物を食べたり、ハチに刺されたりして、アレルゲンが体に入り、体が原因物質に曝されることを曝露と言います。
アレルゲンに曝露されるとアレルギー反応が起こるということです。


1. アナフィラキシーの機序(なぜ起こるのか)

 最も典型的なのは IgE抗体(アイジーイーコウタイ)が関与する即時型アレルギー反応 です。

1. まず、アレルゲン(原因物質)に曝露されるところから始まります。以前に同じ食べ物を食べたとか、ハチに刺されたとかです。

2.その時、原因物質が体内に入ると、 免疫細胞によってIgE抗体が作られ、別の免疫細胞の一種である肥満細胞(マスト細胞)や好塩基球に結合します。
これだけでは症状はおこりません。つまり初回の暴露ではふつう反応は起こりません。
また、IgE抗体が作られるか、作られないかはその人の体質によります。
3. そして再びアレルゲンが体に侵入すると、このIgEがアレルゲンに反応し、激しい反応が即座に起こります。
4. 肥満細胞からヒスタミンなどの化学伝達物質が大量放出され体中に流れます。
5. 化学伝達物質により血管拡張、血管透過性亢進、気管支収縮などが全身で起こります。

その結果、血圧低下や呼吸障害が急速に進行します。



2. 主な原因

代表的な原因は次のとおりです。

食物

* 鶏卵
* 牛乳
* 小麦
* ピーナッツ
* 木の実(クルミなど)
* 甲殻類

薬剤

* 抗菌薬(ペニシリン系など)
* 解熱鎮痛薬(NSAIDs)
* 造影剤

昆虫

* ハチ(スズメバチ、アシナガバチなど)
* アリ(一部地域)

その他

* ラテックス (天然ゴム)
* 食物依存性運動誘発アナフィラキシー 原因食べ物と、食後の運動という組み合わせでアレルギー反応が起こります。

などもあります。



3. 頻度

国や調査によって異なりますが、

* 生涯で数%程度の人が経験すると推定されます。
* 救急受診例は増加傾向です。
* 死亡は比較的まれだが、発症すると短時間で重症化する可能性があります。

薬、食べ物、ハチを合わせて、年間の死者数は60から80人と言われています。
ただ、適切な治療が行われれば多くは救命可能です。



4. 症状

複数の臓器に同時に症状が現れるのが特徴です。


皮膚・粘膜(最も多い)

* じんましん
* かゆみ
* 顔や唇の腫れ
* まぶたの腫れ

呼吸器

* のどの違和感
* 嗄声(声がれ)
* 喘鳴(ゼーゼー)
* 呼吸困難

循環器

* 血圧低下
* 頻脈
* めまい
* 意識障害

消化器

* 腹痛
* 嘔吐
* 下痢

このように、アレルギーといえば痒いだけというのがふつうですが、アナフィラキシーでは、呼吸器症状、循環器症状、消化器症状が出るところが違います。



5. 死に至る原因

 死に至るほどの重篤なアナフィラキシーをアナフィラキシーショックと言います。
主な死因は以下の2つです。

① 気道閉塞

化学伝達物質により、喉頭(のど)から肺への通り道が急激に腫れて空気の通り道が塞がれる状態です。

* 喉頭浮腫
* 重度の気管支攣縮

によって吸ったり吐いたりができなくなり、窒息に至ります。

② 血圧低下 循環不全

大量に放出される化学伝達物質により全身の血管が拡張します。
血管が拡張すると

* 急激な血圧低下
* 心臓や脳への血流不足

が起こり、循環不全で死亡することがあります。



6. エピペンが有効な理由

エピペンは自己注射用の エピネフリン(アドレナリン) 製剤です。

ペン型の注射器でエピネフリンが打てるので、エピペンです。

エピネフリンはアナフィラキシーの主要な病態を同時に改善します。

まず、エピネフリンのα1受容体作用で血管を収縮させます。

→ 血圧上昇
→ 血管からの水分漏出(むくみ)を減らす
→ のどの腫れを軽減

次にエピネフリンのβ1受容体作用により、心臓の働きを強めます

→ 心拍出量増加
→ 循環維持

そしてβ2受容体作用で

気管支を拡張する

→ 呼吸を楽にする

さらに、肥満細胞からの化学伝達物質放出も抑制し、アナフィラキシー反応の大元を止めます。



7. なぜエピペンが第一選択なのか

このようにエピネフリンは、アナフィラキシーの治療になくてはならない薬です。

アナフィラキシーでは

* 血圧低下
* 気道浮腫
* 気管支収縮

が同時進行します。

アドレナリンはこれらを1剤で迅速に、同時に改善できる唯一の薬であり、治療開始が早いほど救命率が高くなります。

一方、

* 抗ヒスタミン薬
* ステロイド

は補助的な薬であり、急激なショックや気道閉塞を即座に改善する効果はありません。
そのため、アナフィラキシーが疑われる場合はアドレナリン筋注(エピペン)が最優先となります。



要点

* アナフィラキシーは全身性の重篤なアレルギー反応。
* 原因は食べ物、薬剤、ハチ毒などが多い。
* ヒスタミンなどの大量放出により、血圧低下・気道浮腫・気管支収縮が起こる。
* 死因は主に「窒息」と「血圧低下、循環不全」。
* エピペン(アドレナリン)は血圧を上げ、気道の腫れを減らし、気管支を広げるため、最も重要な救命薬である。

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